僕 の 目 に は 君 しか 見え ない 僕 の 耳 に は 君 しか 聞こえ ない。 一番大切なことは目に見えない。。。

君の青い目 彼の黒い肌 僕の黄色いこの顔に 何の違いもないということが どうして分からないの?|名言集

僕 の 目 に は 君 しか 見え ない 僕 の 耳 に は 君 しか 聞こえ ない

僕 真っ暗な中で、溜め息がひとつ零れた。 「……だから、来なくていいと言ったのに」 ふっと身体が動いた気配がして、瞬きをすると視界が開けた。 くたびれたクジャの表情が、彼が手のひらに点した小さな光に照らし出されていた。 ジタンは済まなそうに俯き、ぼそりと。 「……悪い」 クジャはふぅ、と溜め息を吐き、手を握り光を消した。 あまり力が残っていない、無駄遣いは出来ない。 「ええと……、その、どうすりゃいいの、かな」 ジタンは頭の後ろをポリポリと掻き、暗闇で見えないのにも関わらず照れ隠しの動きをした。 常時の魔力が残っていればその姿も見ることが出来るクジャだったが、先の戦いで体力を使いきってしまって、それも敵わない。 「お、俺はさ、その……あんたのこと、助けたいって、そう思って、その、悪気があった訳じゃなくて。 うまく行ってりゃ今ごろ、あんたも一緒に外で無事にだな」 「……言い訳しないで」 「い、いいわけ、じゃなくて、ほら、大体あんたがいつまでもこんな所にねっころがってるから」 「……それ以上言わないでよ……、僕、疲れてるんだからさ」 苛立ちを抑えたようなクジャの声にジタンは黙りこくってしまった。 「そりゃ僕も、いい言葉だと思うよ。 『誰かを守るのに理由がいるかい』……でも、馬鹿だ。 君は一応この僕の弟だっていうのに……恥ずかしくなるね、君を見ていると」 「お、大きなお世話だっ」 どんなに疲れていてもこのナルシスぶりは変んねえのか。 少し感心もしてしまう。 「……僕は、……さっきも言ったけど、生きる理由がない。 星の出した老廃物だよ。 そんなものを拾って、どうしようっていうんだい?僕は馬鹿みたいに論理を忘れた考え方は出来ないからね、理由がなければ納得しない。 実際君は理由無く行動してこんな目にあっているじゃないか。 単なる暴走だよ」 むかっとして反論しかけたジタンを、クジャは停めた。 「生きろって言ったのが聞こえなかったのかい?」 はぁ、と溜め息を吐いて、半身を起こした。 「君は何が目的だったんだ。 僕を助けたところで、僕はもう生きられない。 僕には君が馬鹿だとしか考えられないな」 「あんたなぁっ、さっきから人のこと馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿言い過ぎだこのナルシスト!」 「……馬鹿に馬鹿と言われても腹は立たないね。 質問に答えてくれないか。 言った通り僕にはあまり時間が無いんだ」 「……とか言ってるくせに余裕あるじゃねぇか」 「疲れてるんだよ……。 全く……やっとおわりに出来ると思ったのに」 クジャはまた手のひらに光を生じさせた。 「何故、僕を助けに来た」 ジタンは、悪びれもせず言った。 「理由なんて無い」 クジャは光を握り潰した。 「……ここから出たいのかい?」 くたびれたように問う。 「出たい」 ジタンの即答に、クジャは少し考えた。 目を閉じ白い顔の眉間に皺を寄せて、しばらく考えた後、言った。 「……僕は、何なのだろう」 ぽつり、呟いた。 「作られた存在としての僕の思考は何かの意味を持っていたんだろうか」 操り人形だったとしても、僕は自分のしていることが、自分の考えたことだと思っていた。 それは僕だけの大切な心なのだと思っていた。 今考えればそれはやっぱり少し間違えていたのかもと思うことも出来る。 そういう風に考えられる僕も、僕じゃないんだろうか。 (……ガーラントは、僕に何の意味も持たせたくなかったから、僕に『破壊』を教えたんだろうか) 名も残す必要の無いただの駒だったから、妙な物を考えられては困る。 思ったから、壊そうとしたのか? だとしたら、僕に意味はない。 僕の作った黒魔道士たちでさえ、意味を作り出したというのに。 「……君にとって、僕は何だい?」 長い長い沈黙が流れた後、ジタンはようやく、応えた。 「…………兄貴」 「びっくりした……。 起きてたのかい」 「な……、寝てたと思ってたのかよ」 「二十分も返事が無かったら思うよ、普通は」 言おうか言うまいか迷っていたのだ。 本当にそう思っているのか自分でも心許ないし、かといって妙に毒を吐こうモノなら、この死にぞこないはまた「君を殺して僕も死ぬ!」などと言い出しかねない。 「……兄貴、ねぇ……。 君にとっての兄貴分は……何て言ったっけ、あの肌色と茶色の混じった肌の……」 「……ブランクのこと? 何であんたブランクのこと知ってんだよ」 「君の事なら大体知っているよ。 ……あの元気のいい黒魔道士は、さしづめ弟分だろう?」 ふっと笑って、ジタンは得意げに否定した。 「違うね。 ブランクとビビは兄弟分じゃねぇ、恋人だよ、俺の大切な」 「…………あの女の子は?」 「……ダガーは、ダガーだよ。 いいじゃねぇかそんなこと。 あんたは兄貴、知りたいのはそこなんだろ」 「ああ……」 クジャは不思議な気持ちでひとつ首を捻った。 「兄貴って、どういう物なのかな」 一応、つい最近まで一人っ子だったジタンも「さぁ」と同じように首を傾げる。 「……家族、だろ?」 「家族って何だい?」 タンタラスは一種の家族的社会ではあったものの、それでもバクーに扶養されていたというよりは自分の食い扶持は自分で稼ぐといった感じだったから、「家」という意識は持っていたにしろ、(ブランクはとりあえずおいといて)マーカスたちに対して抱く感情は、家族という言葉から連想されるような強制連帯的なものではなく、いわゆる「友達」と呼ぶ方がしっくりくる。 「……自分で考えろよ。 俺はどうせ馬鹿だから解かんねぇよ」 不思議な気持ちは消えない。 真っ暗な緑に囲まれて、微かにジタンの匂いが混じった草の香りに包まれて、身動き一つ取るのも大儀なこの状況で、どうしてかこんなに満たされている。 まるで城の広いベッドでうたたねをしているかのようだ、いや、あれよりもずっと、心地いい。 クジャは、手探りでジタンの身体に触れた。 「んわっ」 「……そんな驚かないで。 ……ショックだな……」 「だ、だって……、いきなりシッポ触るから……」 頑丈ではあるが、それでも尻尾を触られるのは微妙に気に入らない。 「だいたい、あんたにだってシッポあんだから、自分の触ってろよ」 「君の……、弟のシッポを……触っていたいんだ。 ……駄目かい?」 少し固めの毛が生えたその部分に触れられたまま、そんな風にしおらしく聞かれてしまうと、一応「弟」である彼は、あまり邪険には扱えないのだった。 実際のところ、普通の兄弟であれば「ふざけんなボケ」と言って喧嘩が始まるところであろうが、彼らはまだ、こういう関係になって間も無いのだ。 「……勝手にしろよ」 ジタンが言うと、クジャは尻尾を握った。 あまり力を入れず、そっと。 「シッポ、誰かに触られたことは?」 「あるよ。 色んな奴に」 「……普通の人間は珍しいと思うんだろうね、やっぱり。 ……僕は見えないようにはしてあるんだけど」 「あんたの場合、生えてたってまずそのパンツに目が行くって」 「……卑らしい人がそういう所を見ようとするんだ」 「へぇ。 じゃあ忠告しとくけど、見てクダサイって言ってるようなもんだぜそれ」 「……ふ。 もっとも僕の完璧な肢体であれば、見たくなる君の気持ちも分からないではないが。 ……触りたかったらどうぞ」 「……やっぱ手離せテメェ」 「やだ」 この微妙な相性の良さは一体何なのか。 取ってつけたような兄弟仲を、クジャは意外と求めていた。 「……僕は君のお兄さんか」 「いや?」 「……別に」 沈黙が再び暗闇にやってきた。 クジャに尻尾を握られたまま、さてこれからどうしようかとジタンは腕を組んで考えた。 とりあえずこの窮屈な空間から抜け出す術を考えなければならない。 …彼自身、相当の覚悟を決めてクジャの救出に飛び込んだように見えて、実は「いつもみたいに、どうにかなんだろ」とタカをくくっていたのだった。 コイツに頼み込んでも望み薄だしな……。 としたら、やっぱり手持ちの小刀でこの頑丈そうな植物の茎を根気良く削っていくほかないだろうな。 ふーっ、と息を吐いたジタンに、不意にクジャが言った。 「疲れてるんだろう」 そう言った彼の方が、百倍疲れているようにジタンには思えたのだが。 「ああ……、疲れてるよ。 そりゃ、あんだけわかりにくい城の中歩き回って、んであんたとヤッて、それから何か解かんないのとヤッて……、挙句の果てに全力で走りまわったら、そりゃ疲れるさ」 「……寝たら?」 「……んー……寝てもいいんだけどさぁ、寝てる間にあんたに死なれたりした らヤじゃん」 気分を害したようにクジャは言う。 「死なないよ。 そこまで過保護にしてくれなくてもいい」 そして、からかうように付け加える。 「何なら、抱いてあげようか?」 「…………口の減らねえ野郎だな……うぉっ」 ぐい、と引っ張られて、何だか冷たいものが頬に当たる。 「……は、離せ、ばか」 細く長いもので、髪の毛を弄ばれる。 くすくすと笑われ、「怖がるなよ」と耳元で囁かれ、しかし怖さはもう無い。 「……誤解しないでよ、傷付いちゃうな……。 可愛いイトシイ弟の為に、胸を貸してやるって言ってるんじゃないか。 好意は有り難く受け入れるべきだと思うな。 それに、一生に一度くらい、……僕だって誰かの為にしてみたいと思うんだよ、駄目かい?」 「……あんた、ドサクサに紛れて何でもしようとするんだな……。 フツー俺らくらいの年の男兄弟ってのは、仲悪いもんだぜ」 「他がどうだからって、僕らがそうしなければいけない理由はないだろう? ……ほら、子守り歌も歌ってあげるから、ゆっくりお休み」 「……う……」 不気味に優しげな指が髪を撫でる。 何らかの魔法が篭ったそこから、意識が少しずつ痺れていくような感じがする。 奇妙な感じにとらわれながらもそれは決して不快ではない。 クジャの心が解れた意外さと、何故だか生まれた嬉しさとが交じり合って、何だか、「もういいや」という気分になる。 クジャがゆっくりと歌を口ずさみ始めた。 反響などするはずの無いこの閉鎖された空間で、しかしその声はゆったりとした広がりとともに、ジタンの耳に届いた。 男のくせに、綺麗な声してやがる…、沈み行く意識の奥底で、ジタンはそんな風に笑って。 「ん!?」 がばっと起き上がった。 「何だよ」 陶酔していい気分だったのに歌を中断させられたクジャは、かすかに腹立ちを含めた声で聞き返した。 「あ、……いや、……その歌、あんた何で知ってんの?」 「何でって……。 君もこの歌を知っているのかい?」 「知ってるさ。 ……ダガーが歌ってた。 ダガーしか……知らないハズなのに」 クジャはふぅんと何度か頷いて……再びジタンを抱き寄せた。 「じゃあ、一緒にうたおう。 こんな経験、そうそうあるハズ無いからね」 「……一緒にって……」 「僕も歌詞は知らない。 だから、メロディだけでも。 子守り歌で、結局眠ってしまったジタンを横たえて、クジャは微笑んだ。 もちろん聞こえていないことが前提。 少しだが魔法も使ったから、そう簡単には目覚めないはずだった。 君は幸せだ。 そしてそんな君の命を救うコトが出来て、僕もとても幸せだよ」 表情筋の使い方を今まで知らなかった。 こんな風にすれば、もっと優しく笑うことが出来るのか。 クジャはふわりと心と身体が軽くなったのを感じた。 僕の本当の役目はここにあった。 僕の二十一年間は、彼のためにあった。 今日、この瞬間のためにあったのだ。 それらから解放されて、襲い掛かって来る悔恨に手を広げて抱かれよう。 自分の犯した罪を、最初からやり直す術を探そう。 誰かのために。 僕はまず、ジタンのために。 「…………」 唇が何事か、紡いだ。 静かな鼓動がそこに残った。 ジタンがゆっくりと、立ち上がった。

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家事をしない彼女

僕 の 目 に は 君 しか 見え ない 僕 の 耳 に は 君 しか 聞こえ ない

続き物のお話を考えている最中に不意に浮かぶのは別の話だった・・・。 以前に途中で「もう今はこれ以上書けない!ボツ!!」と途中まで書いてほったらかして置いた話の続きが浮かんでしまったので、忘れないうちに書きました。 ・・・それも続いてんのは何故だ? スミマセン。 夜、眠る前とかに話の続きがよく浮かびます。 そしてそのまま寝るのをやめてPCに向かったりするのはよくあることです。 だって寝ちゃったら忘れてしまうんですもの。 勇利ちゃんが病弱設定とか色々浮かんでるんですが、今回は『盲目』設定です。 『盲目の少女』と言うと、浮かぶのは某ギアスのナナリーちゃん・・・。 他作品などにいつもブックマークや評価、ありがとうございます。 大変励みになります! [chapter:音だけは僕を裏切らない、優しい世界だ] その瞳は、今、何を見ている? その瞳で、今、何が見えている? いつか、その瞳は、僕を映してくれるだろうか? その時、その瞳に映る僕は、どんな姿をしている? 音が聞こえる。 エッジが、氷を削る音。 ジャンプして、着氷する重い音。 音しか、僕の世界にはない。 「・・・少し、時間をください。 ・・・考える、時間を・・・」 なんであんなこと言ってしまったんだろう? 怖じ気ついた、多分それなんだろうな・・・。 怖くなったんだ、僕は・・・。 **** 僕の住むアパートから左へ歩いて五十歩。 信号を渡って、また百二十歩。 そして右に曲がればスケートリンクがある。 冬になるとリンクになるそこに、僕は毎朝通う。 朝、まだ他のお客さんが遊びに来る前、特別に僕は滑らせてもらえるのだ。 それも全てはリンクを管理している管理人さんのご好意なんだけど。 もうおじいさんな管理人さんは、僕の手を引いて滑ってくれる。 「おはよう、ユウリ」 「おはようございます、管理人さん」 今日の天気は晴れだとラジオのウェザーニュースでは言っていた。 僕にはイマイチよくわからないけど、でも晴れているならリンクで滑れるから嬉しい。 雨だと滑れないから・・・。 「管理人さん、見てみて、ビールマンポジション!」 片足を上げて、頭上で足を掴んで、ポーズ。 これくらいなら僕でも出来る。 前にたまたま参加したスケート教室で教えてもらったのだ。 「ユウリはスケートが好きなんだなぁ」 「好き。 特に朝のスケートリンクは静かで、好き!」 もう気づいているだろうけど、僕は目が見えない。 子供の頃は瓶底みたいな眼鏡をしてたけど、それでも少しは見えたんだ。 でも、小学生の頃に完全に失明した。 失明した僕には大切な家族がいた。 盲導犬のヴィクトル。 ヴィっちゃん。 僕の目になってくれたヴィっちゃん。 でもヴィっちゃんはもういない。 おじいちゃんになったヴィっちゃんは施設に帰り、そこで余生を送って天に召された。 新しい盲導犬を、と言われたけど僕はまだ迎えられずにいる。 だから今は杖が目の代わりだ。 管理人さんに片手を引かれたまま、ビールマンポジションで滑る。 管理人さんは「スパイラルシークエンスだな」って笑ってる。 僕も楽しくて笑う。 「こうしていると、ユウリは氷上のエンジェルみたいだよ」 僕の記憶が確かならば、この顔は平凡な日本人と同じ顔だ。 特別鼻が高いわけでも、彫の深い顔立ちでもない。 十人並みの普通の顔。 黒い髪に、ちょっと茶がかった黒い目。 そんな普通の顔も、今の僕には見えないものなんだけどね・・・。 「ヴィクトル・ニキフォルフは来シーズンを休むらしいよ」 「・・・へぇ・・・。 あのリビングレジェンドが・・・」 「なんでもイマジネーションが湧かないとかで休みが欲しいんだとさ」 「イマジネーション・・・」 イマジネーションが湧かない、ということは表現者にはダメージが大きい。 大変なんだな、と思う。 朝のリンクと別れを告げたら、僕は図書館に行く。 図書館の点字コーナーで本を選んで、本を読みふける。 本は好きだ。 いろんな世界に連れて言ってくれるから。 毎日通うから司書さんとも仲良くなった。 「ユウリ、もう五時だよ?」 「えっ、もう五時?いけない、今日は買い物しなきゃいけないんだ・・・」 「ミーシャさんのお店で?」 「そう。 ミーシャのお店、人気あるから売り切れちゃうよ」 「気をつけてね」と司書さんに声をかけられて、僕はミーシャのお店に向かう。 図書館からミーシャのお店まではちょっと遠い。 というよりも、図書館が僕の行動範囲から一番遠くにあるだけなんだけども・・・。 図書館からミーシャのお店に行く途中に通る道は少し苦手だ。 昼間ならいいんだけど、バーとか、お酒を飲むお店が何件かあって、時々酔っ払いがいることがある。 そんな人たちに絡まれるとすごく厄介なんだよね・・・。 「・・・寒・・・。 もしかしたら、明日は雪が降るかもしれない・・・」 雪道も苦手だ。 外出出来ないわけじゃないけど、滑りやすいし、雪に足を取られてうまく歩けないから。 スケートは好き。 冬にならないとスケートリンクで滑れない、でも雪は嫌い。 なんだか矛盾してるなぁ・・・。 スケートクラブの施設なら屋内リンクがあって年中滑れるだろうけど、僕は完全な趣味だし、クラブに所属したってまともに滑れないんだから意味ない。 会員料金がもったいないというか・・・。 ミーシャのお店で買い物をして、僕は部屋に戻る。 簡単な食事を作って食べ終えたら(目が見えなくったって慣れで料理くらいは出来るのだ)、お風呂に入る。 お気に入りの入浴剤を入れて、たっぷりとお湯に浸かるのが好き。 こういうところが日本人なんだろうな・・・。 僕がロシアのサンクトペテルブルクにやってきたのは、五歳の頃だ。 母方の祖父に誘拐されるように、この寒い国にやってきた。 母方の祖父は変わり者、変人として親戚中から有名な人で、でも、僕にとっては生きる糧をくれた大切な大切な人。 祖父は音楽家で、世界中を旅して回っていて自分の生まれた国である日本にはほとんど近寄らなかった。 年を取ってからは大好きなロシア音楽に囲まれて暮らしたい、ってだけでロシア永住を決めてしまった。 そんな祖父がどうやって僕のことを知ったのか分からないけど、『私と来たらキラキラな世界を教えてやろう』と僕を攫いに来た。 僕はその『キラキラな世界』がどんなものなのか知らなかったけど、家族も僕のことを持て余し気味だったことを知っていたから、祖父の手を取った。 祖父がくれた世界。 『音のキラキラした世界』は素晴らしかった。 ボリショイ劇場にマリインスキー劇場。 祖父が聴かせてくれる様々な音楽。 そして祖父に教わってピアノやヴァイオリンを弾いて、音に満ちた世界で僕はなんとか生きている。 その依頼が来たのは、初夏を過ぎた頃だった。 街から雪の気配も消え去った頃のこと。 「あなたにアレグロ・アパッショナートを弾いてもらいたいの」 ピアノ協奏曲ロ短調アレグロ・アパッショナート。 ピアノ曲でも難曲で有名な曲だ。 依頼人はリリア・バラノフスカヤ。 僕でも名前を知ってる元ボリショイバレエ団のプリマドンナ。 「なんのためにですか?」 「この曲を、私が振り付けているスケーターのFSの曲にしたいのよ」 「・・・スケート、ですか?」 「曲は4分30秒になるようにアレンジしてもらいます。 できますか?」 出来るか出来ないか、問われれば出来るけれど・・・。 「あの、バラノフスカヤさん。 僕はこの通り、目が見えません。 スケート選手がこの曲に合わせて滑る、と言われても、僕には想像することしか出来ない・・・。 それでもいいんですか?」 「あなたのこれまで弾いた曲は全て聴きました。 ・・・とても素晴らしかったわ。 目が見えないとかそういうことではなく、あなたの魂の演奏に惹かれたのよ。 これではいけない?」 ・・・魂の演奏に惹かれた。 こんな言葉貰ったのは初めてだった。 *** その日、ヤコフはどこかそわそわしているように見えた。 いつもの怒鳴り声もなりそ潜めている。 なんか、キモチワリィの。 すると、ヤコフのケータイが鳴った。 「お、私だ。 ついたのか?ああ、リンクで待っている」 通話を終えると、おもむろにヤコフは俺をリンクサイドに呼びつける。 「ユーリ。 お前に客人が来るぞ」 「ハァ?誰だよ?」 「失礼のないようにしろよ?わかってるな?」 だから誰だよ??? しばらくして、ガチャリ、とリンクのドアが開く。 姿を見せたのはリリアだった。 いや、違うな、彼女は誰かを連れていた。 「ユウリ、ここに段差があるから気をつけて」 「はい」 リリアが手を引いてるのは女だった。 多分、東洋人の女。 年齢はイマイチよくわからない。 その女はなぜか目を閉じている。 そしてもう片手には白い色の杖をついていた。 「ここが屋内リンク。 初めて来ました。 やっぱり涼しいんですね」 その女はへにゃっと笑った。 「ユーリ、紹介するわ。 彼女はユウリ・カツキ。 彼女にはあなたのFSの曲を演奏してもらいます」 「初めまして、ユーリ・プリセツキーさん。 ユウリ・カツキです」 その女はペコリと頭を下げた。 全く見当違いな方向に、だ。 「ユウリ。 こっちよ、こっち」 慌ててリリアがその女の体の向きを変えてやる。 このオバサンが慌てるところ、初めて見たぜ。 「ああ。 すみません。 ・・・僕、目が不自由でして・・・。 改めまして、ユウリ・カツキです」 「・・・目が不自由?」 「ええ。 見えないんです。 ・・・あ、大丈夫です。 あなたの演技は全部見せていただきました!実況と解説の人が説明してるから今どんな演技をしてるのかは頭に入って来ますから。 ・・・それを元に想像するというか・・・」 「・・・ふーん・・・」 それ、見えてるとはいえねぇんじゃねーのか、とは言わずに置いたけど・・・。 「目が見えねぇのに、ピアノ弾くのかよ?」 すると、その女、ユウリ・カツキは笑顔で言った。 「盲目でも、素晴らしい演奏をする演奏家は世界中にたくさんいます。 勿論、盲目というはハンデになりますが。 それでも一流の演奏家はいますよ。 僕がその中に入れるかはわかりませんがね。 でも演奏家の一人としてのプライドはあります。 目が見えないイコール何も出来ない、と思われるのは大変に不愉快です」 ・・・この女、結構ハッキリ言うタイプらしい。 見かけはおどおどしてる感じの冴えない女なのに。 「ユーリ、言葉はちゃんと選びなさい・・・」 「・・・あの。 ユーリさんにお願いがるんですけど・・・」 目の見えないあの女は何故かFSを滑って欲しいと言って来た。 振り付けはしてもらえてるから滑れるっちゃ滑れるが・・・。 でも、この女、目が見えないんだろ? 意味あるのか? そんな意味を込めてヤコフとリリアを見たが、二人とも問答無用で「滑れ」と目で言って来たので、仕方なく俺は滑る。 「・・・・滑ってる時のエッジ音がほとんど聞こえない・・。 本当にスケーティングが上手いんですね・・・」 「耳がいいのね」 「ええ。 普通の人が滑ったらもっと氷の削れる音がしますから。 彼、本当に上手いんですね・・・」 「ユーリは性格はまぁ難ありなところがあるが、スケーターとしてはこれからどこまでも伸びる。 どうか、アイツの手助けをしてやって欲しい。 君のピアノで」 「・・・はい・・・」 滑り終えて、リンクサイドに戻って来た俺に、あの女はパチパチと拍手をくれた。 「ありがとう。 僕のわがままを聞いてくれて。 ・・・僕も君のスケートに華を添えられるようなピアノを弾きます。 ・・・よろしくお願いします」 差し出されたその手を、俺は取った。 その瞳に、僕を映して その瞳に、僕はどんな姿で写っているの? 君の瞳、それは真実を映す鏡 君の瞳に、僕は、今どう映っているの? [chapter:瞼で閉ざされた瞳、その瞳に映る僕の姿はどんな姿をしている?] [newpage] ・勝生勇利 盲目の音楽家。 作曲もこなせる。 得意な楽器はピアノ。 国籍はロシアに帰化している。 幼少時は少し視力が残っていたが、現在は完全に失明。 なのでメガネはかけていない。 盲導犬のヴィクトルを失い、今は杖が目の代わり。 祖父はまだ存命だけど、わがままを言って一人暮らし中。 コンサートやCDの収益でなんとか自活している。 ・ユーリ・プリセツキー 今シーズンからシニアに上がったフィギュアスケーターの少年。 休養するヴィクトルからSPの曲と振り付けはなんとかもぎ取った模様。 モスクワに祖父がいる。 それ以外の家族とは疎遠。 リンク近くのアパートメントに一人暮らし(家賃は国からの援助金でなんとかしている)。 今風の若者らしくファッションとかにも興味があって、かなり独特なセンスを持っている。 でも無駄なお金は使いたくない。 意外と倹約家。 ・ヴィクトル・ニキフォロフ イマジネーションが湧かないとかなんとかで今シーズンは休養するそうだ。 ユーリとのかつての約束 当人は忘れていた模様 通り、彼にSPの曲と振り付けを与える。 イマジネーション復活のためにリフレッシュするべく世界一周の旅に出てしまった。

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天と地程の差はあるが、天と地しか選べない。

僕 の 目 に は 君 しか 見え ない 僕 の 耳 に は 君 しか 聞こえ ない

ウグイス君の鳴き声に気づいたのは冬が終わろうとしている頃だったと思う。 散歩コースの川べりの草むらだった。 春告げ鳥だなと思った記憶がある。 その近くを通ると鳴き声で足が止まった。 最初はホーホケキョには程遠い鳴き方だった。 ケキョケキョみたいな感じだった。 「頑張れ、頑張れ!」 僕は幾度か声をかけた。 ウグイス君はなかなか上手にはならなかった。 優等生ではなかった。 散歩の途中でいつも観察していた。 「ちょっとだけうまくなったよ。 」 僕はそれも伝えた。 人間は他の動物の言葉をわからない。 でも、動物たちは人間の言葉を理解しているのかもしれない。 子供の頃から時々そんなことを感じることがあった。 証拠は何もないんだけど、今でもどこかでそう思っている。 だから僕は声に出して言うことが多いのだろう。 今朝、初めて「ホーホケキョ」が聞こえた。 幾度も聞こえた鳴き声の中の一回だけだった。 しばらく聞いていたが、他はホーホケケキョケキョなどだった。 声もだいぶ大きくなっていた。 少し自信がでてきたのかな。 実力が伴っていないのに、えっへんと鳴いているのを愛おしく思った。 自分自身を重ねていたのかもしれない。 10回の失敗を忘れて一回の成功だけをうれしそうに憶えている。 ウグイス君と親友になった気がした。 2020年6月10日 二か月ほど巣ごもり状態だった。 専門学校での仕事が6月から始まったので以前と同じような感じで学校へ向かった。 久しぶりの通勤だった。 頭の中の地図を辿りながら慎重に歩いた。 ポイントは白杖で確かめつつ音もしっかりと聞くように心がけた。 鈍っていた感覚を少しずつ取り戻すような作業だった。 阪急烏丸駅の西改札を出ようとして迷ってしまった。 点字ブロックの場所が変わってしまっていたのだ。 駅員さんに尋ねようとしたが、その場所さえ分からなくなっていた。 足音に声をかけようとしたが、躊躇してしまう僕がいた。 数か月前にはなかったことだ。 ソーシャルディスタンスとか3密とかの言葉が脳裏をよぎった。 いくつか足音が通り過ぎたが、サポート依頼をする勇気が出なかった。 僕は自分の勘を頼りに少しずつ動いた。 やがて、右側で券売機の音がした。 券売機を背にしてまっすぐ行けば階段がある筈だ。 成功した。 ほっとした。 点字ブロックの場所が少しずれただけ、きっと見える人には問題ないだろう。 点字ブロックの方向や分岐点の位置を地図として使う僕にとっては大問題だ。 それにしても、このウィズコロナの社会に僕達はどう関わっていけばいいのだろう。 一定の距離を保ってのサポートは難しいだろう。 今まで通りに社会に参加したいし、 勿論、他の人に迷惑もかけたくない。 しばらくは悩める日々になりそうだ。 2020年6月6日 4月は仕事らしきものはまったくなかった。 5月は高校のテレワークが週に一回あるだけだった。 6月が始まって社会が少し動き出した。 久しぶりに仕事で外出をした。 毎年声をかけてくださっている盲ろう者通訳介助員の養成講座の仕事だった。 方法は例年と違った。 受講生の三密を避けるために一部の講義はビデオ撮影で対応するとのことだった。 だから会場は録画や録音の機器が準備してあるスタジオだった。 僕の方は見えないのだから、前に受講生がいるかいないかはあまり関係ない。 ほとんどいつものように実施できた。 主催者の聴覚言語センターの職員の方々のサポートも適格だった。 終わってから職員の方々と意見交換した。 聴覚障害の職員の方もおられたが、手話通訳者のお陰でコミュニケーションに問題は なかった。 目と耳と障害は違うけど、うなずく部分が多くあったとおっしゃった。 小学校などで子供達にしっかりと伝えていくことの大切さでも思いが重なった。 お互いに頑張ろうとエールを交換した。 コロナの時代での仕事始め、仕事の意味を考え直すいい時間となった。 変化していく流れの中で変化してはいけないものの大切さを考えた。 社会の中で呼吸している自分を感じた。 また頑張ろうと思った。 2020年6月2日 とうとう僕もZoom会議にデビューした。 地域の視覚障害者協会理事会が在宅でのZoom会議となったのだ。 参加理事9名のうち6名は全盲だ。 会長は自分自身も全盲だがパソコンやスマートフォンなどへの知識は長けている。 その会長がそれぞれ事前訓練をしてくれたお陰で開催できたのだ。 全盲の場合は元々お互いの顔は見えていないせいか違和感はほとんどなかった。 ただ、後で気づいた。 音声だけの会議と映像付きの会議とあるのだが、普通に映像付きで実施していた。 何故だろう。 見える人がやっているようにやったということなのかな。 映像はお互いに確認できない。 ひょっとしたら、顔の一部しか映っていない人もいたかもしれない。 僕ははげたおでこだけが映っていたのかもしれない。 今更だけど、ちゃんと髪もセットして服も整えておけばよかったと後悔している。 もう終わったことだから、今回はこれでよかったことにしよう。 見えている人とのZoom会議に参加するときは気をつけなければと思った。 見えているって結構面倒くさいなあ。 2020年5月27日 懐かしい人からのメールが増えた。 ホームページのお問合せフォームからのメッセージも増えた。 これは以前は講演依頼がほとんどだったが、すっかり様変わりした。 自宅で過ごす人達がそれぞれの思いを持って生きておられるということだろう。 いろいろな地域でいろいろな人達がこのホームページを覗いてくださっているのを再 確認している。 有難いことだ。 先日の「Be My eyes」への反応も多く寄せられた。 実際にパソコンの画面の説明をしながら買い物を手伝ったとか、 洋服とピアスの色合いを見てあげたとかの報告もあった。 小学生からも届いた。 アプリをインストールしてからスマホが鳴るのをワクワクしながら待っているという のもあった。 どのメールにも共通していたのは喜びだった。 自分が誰かの役に立つということを心から喜んでいる姿があった。 それを読んだ僕もまたうれしくなった。 愛は人間の本能の中にあるのかもしれない。 ゾウさんよりも小さくてライオンよりも弱い人間が文明を築いてこられたのは、 この本能の部分にあるような気がしている。 目に見えないものと僕達は今向かい合っている。 社会はどう変化していくのだろう。 自分自身の本能を見つめなおしていきたい。 2020年5月22日 北海道の友人からアスパラが届いた。 2Lサイズの立派なものだ。 この辺りのスーパーでは見かけたことのない太さだ。 茹でてから、ちょっとだけマヨネーズをつけて頂いた。 甘さが口中に広がった。 それだけで満足した。 有人はビールが進むと表現していたが、下戸の僕にも分かるような気がした。 北海道の豊かな大地を想像した。 北海道には幾度か行ったことがある。 思い出は宝物になっている。 こういう時代になって、幸せの意味を考える時間が多くなった。 簡単に答えは出ないことも知っているけど、 思い出が輝くというのは素晴らしいことだと思う。 思い出になってくれた時間にありがとうを伝えたい。 先日は高校の同級生からお米が届いた。 もう10年以上会っていなかったし、賀状のやりとりさえも不確かなものだった。 彼女もきっといろいろ考える時間が増えたということだろう。 高校時代の思い出が輝いてくれているということなのかもしれない。 お米と一緒に届いたメッセージには、 「陣中見舞い、腹が減っては戦もできぬ」と書いてあった。 今、それぞれの人がそれぞれの人生を見つめなおしているのかもしれない。 その先にはきっと、過去よりも豊かになった未来があるはずだ。 いや、そうありたい。 2020年5月18日 久しぶりの仕事、ちょっと早起きもして準備万端で出かけた。 いつものように、健康のためにバス停二つ分は歩いた。 バス停が近くなったところで、ずれさがってきたサングラスを上にあげようとした。 驚いた。 サングラスがなかった。 かけるのを忘れて家に置いたまま出かけてきてしまったのだ。 マスクのゴムが耳に当たる感覚をサングラスと勘違いしてしまったのだ。 残念ながら初めてではない。 マスクをするようになってからもう3回目だ。 情けなくなってきた。 学習能力が低下しているのだろう。 そのうち口元にサングラスをして目にマスクをして歩いているかもしれない。 もし見つけた方、そっと教えてくださいね。 ささやかなプライドを傷つけないようにお願いしますね。 ちなみに、今日はそれから引き返していつものサングラスをかけた。 目にサングラス、口元にマスクがあることを手で触ってしっかり確認した。 近くのバス停からバスに乗車した。 仕事はギリギリセーフで間に合った。 早起きしてたから間に合ったのだ。 これって早起きは三文の徳になるのかな。 2020年5月14日 いつもの道をいつものように歩いていた。 幅2メートルくらいの道だ。 突然頭頂部が何かに当たった。 僕は立ち止って手で確かめた。 やっぱり葉っぱだった。 昨日も一昨日も歩いたが気づかなかった。 いや、存在していなかった。 木の葉が成長した重たさで枝がほんのわずか垂れ下がったのだ。 数ミリかもしれない。 散歩の人は元より、僕の横を通り過ぎていった車の運転手さん、 追い越していった自転車の人、 きっと誰も気づいていないだろう。 はしゃぎまわっていた小鳥達さえも気づいていないだろう。 世界中で僕だけが気付いたのかもしれない。 宝物を探し当てたような気分になった。 僕は葉っぱをそっと鼻に近づけた。 緑の匂いはわからなかったけど、生き生きとした緑の触感は感じた。 小さな幸せ、大好きです。 2020年5月12日 晴れ渡った空。 空の蒼さを風が教えてくれている。 風に吹かれているだけで気持ちいい。 地球ができた時からずっと、風は吹き続けていたのだろうな。 あっちにこっちに吹いていたのだろうな。 そんなことを考えながら深呼吸する。 それからもう一度空を眺める。 いつかどこかで見たこいのぼりを思い出す。 今日はこいのぼりの鯉も喜んでいるだろう。 記憶が少年時代の鯉につながっていく。 近所の川で鯉釣りをした。 いつもは鮒しかつれなかったが、大雨の後などは鯉が釣れた。 養魚場の鯉などが流れ出ていたのだ。 それを釣って家の池で育てた。 金色、赤、白、紅白、綺麗だった。 毎日のように釣りにでかけて、夏休みの宿題ができなかったことも憶えている。 時間がゆっくりと流れていた。 あの頃、豊かさって何だろうなんて考えたことはなかった。 でも、確かに豊だった。 今年は考える時間はありそうだ。 もう一度考えてみよう。 豊かさって何だろう。 残された人生を豊かに過ごすにはどうしたらいいのだろう。 そのために生きているのだから。 風、ありがとう。 2020年5月8日 団地の前の道は人通りも少ない。 バス停の手前で折り返せば遭遇する人数は一桁ですむ。 僕の散歩コースになっている。 自転車だけには気をつけて歩いている。 非常事態宣言の後、通行人も自転車も少なくなった。 社会全体が不要不急の外出を自粛しているということだろう。 僕も散歩は30分程度と決めている。 今日も散歩していたら、後ろから自転車の微かな音が聞こえた。 僕は立ち止って自転車が通り過ぎるのを待った。 「松永さーん、頑張ってねー。 」 自転車の人はそう言いながら横を通り過ぎていった。 「ありがとうございまーす。 」 僕は咄嗟に大きな声で返事をした。 ただそれだけのことをとてもうれしく感じた。 その人が誰なのか僕は分かっていない。 でも、頑張れよとおっしゃってくださった。 人間同士が交わす言葉の大切さを再認識した。 何気ない挨拶が素敵なんだと痛感した。 当たり前ではなくなって当たり前が見えてくる。 今感じることをしっかりと憶えておきたい。 当たり前になった時、きっと宝物になる。 2020年5月4日.

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