マーサ ナカムラ。 第23回中原中也賞がマーサ・ナカムラさんの『狸の匣』に決定しました

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概要 第23回「中原中也賞」では、平成28年12月1日から平成29年11月30日までに刊行された現代詩の詩集174点が寄せられました。 平成30年2月10日、最終選考作品として選ばれた7作品を対象に、山口市湯田温泉の湯田温泉ユウベルホテル松政で選考会を開催しました。 審議の結果、第23回中原中也賞は、マーサ・ナカムラさんの『狸の匣』(思潮社)に決定しました。 受賞者には、正賞として中也と親交のあった彫刻家高田博厚 1900-1987 制作中原中也ブロンズ像と、副賞として100万円を贈呈します。 第23回中原中也賞の贈呈式は4月29日 日曜日・祝日 に山口市で行い、あわせて太田治子氏(作家)による記念講演を開催いたします。 受賞作品 『狸の匣』(思潮社) 受賞者 マーサ・ナカムラ 受賞のコメント 中原中也賞受賞の連絡を受けて、中也から背中を押してもらった気持ちです。 会社員生活で時間的余裕のない中で、詩集を刊行するにあたり十分な時間を確保できず、刊行を諦めようと思ったことが何度もありました。 それでも刊行することができたのは、編集者や関係者の方々のご尽力があったからです。 昨年10月、石川県金沢市に行った際、中也の詩「サーカス」にインスピレーションを与えたという大欅に出会いました。 思いがけず中也がこの世界に生きていた証を見た気がして、とても不思議な気持ちになりました。 中也の「サーカス」の詩のような、心に残る詩を書いていけたら幸せです。 本当にありがとうございました。 選考経過 公募、推薦の詩集174点について本年1月に開催された推薦会の検討の結果、 海老名絢 『きょりかん 』、田中さとみ 『ひとりごとの翁 』、十田撓子 『銘度利加 』、橋本シオン 『これがわたしのふつうです 』、藤本哲明 『ディオニソスの居場所 』、マーサ・ナカムラ 『狸の匣 』、松本秀文 『「猫」と云うトンネル 』の7冊が選ばれ、本日の選考会の対象とされた。 最初の討議で、海老名絢、十田撓子、マーサ・ナカムラの3作品にしぼられた。 どの作品にも選考委員それぞれが愛着を持ったが、海老名絢『きょりかん』は、全42頁の手作りの詩集で、その良さを発揮していた。 異性との距離感から身体の内部に入り込もうとする難しい方法をとりながら、その語感の素晴らしさと感受性の豊かさが評価された。 しかし、収録作品数が少なすぎる。 十田撓子『銘度利加』は、秋田と青森を結ぶ街道の、忘れられた地域の歴史を説話的に描いた力作。 ロシア正教が入ってきて、その土地に沈むように聖書の世界があり、それを家族の歴史に結びつけて描く。 アイディアと構成は貴重だが、言葉が淡々としていて類型的な表現が目立つことが惜しかった。 もっと刈り込むことができたら、さらに素晴らしい作品になったことだろう。 マーサ・ナカムラ『狸の匣』は、圧倒的に詩を読むことの楽しさを教えてくれる。 作者はどの時代にも潜り込むことができて、時間や空間の扱い方とその柔軟さ、そこに秘められたユーモアは天性のものと言える。 昭和史を描き、家族を描き、それをクロスさせて一冊の詩集に閉じ込める力わざは、長編小説を読んだときのような魅力がある。 詩を通してあらゆる時代に潜り込むことのできる面白さ。 しかも普遍性がある。 天才的な言葉の膂力である。 中原中也賞にこそふさわしい。 最終選考作品 著者名五十音順) 著者 詩集タイトル 出版社 海老名絢 きょりかん 私家版 田中さとみ ひとりごとの翁 思潮社 十田撓子 銘度利加 思潮社 橋本シオン これがわたしのふつうです あきは書館 藤本哲明 ディオニソスの居場所 思潮社 マーサ・ナカムラ 狸の匣 思潮社 松本秀文 「猫」と云うトンネル 思潮社 選考委員(五十音順) 氏名 肩書き 荒川洋治 現代詩作家 井坂洋子 詩人 佐々木幹郎 詩人 高橋源一郎 作家・明治学院大学教授 蜂飼耳 詩人 応募状況(一般応募作品161冊) 全国38都道府県より応募がありました。 山口県内からは6人(うち山口市内1作品)。 最も応募が多かったのは、東京都の34人でした。 応募者は159人、その内訳は、男性が72人、女性が87人でした。 関連リンク 中原中也についての関連リンク <外部リンク>.

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※開催中止 文学ムック「ことばと」(書肆侃侃房) 創刊記念佐々木敦 × マーサ・ナカムラ × 山本浩貴トークイベント

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/我々の走馬灯の中で、並んで「そこにいる」「待つ」彼等を、頼もしく思うことさえある。 大きな書店の詩歌の書棚の前に立って、著名な詩人の詩集たちの隙間に押し込まれている、薄っぺらい冊子のような詩集を買うのだ。 代金を文字数で割ったらいったい幾らになるのだろうなどと独りごちながら、確たる基準も無しに詩集を選ぶ。 マーサ・ナカムラの詩集は、オンラインで購入した。 そこに大した意味はない。 「未明 02」に載っていた詩が気になって取り寄せたのだ。 投げ出された言葉の響きが気になって。 詩の言葉にア・プリオリな意味はない。 ア・ポステオリに湧き上がり共鳴し合う心象を追いかけるだけ。 縦書きの言葉を追いかける度に、そう畏まって自戒しながらも、諦め悪く詩人の頭の中にあるだろう意図に思いを馳せてしまう。 例えば、小池昌代の、蜂飼耳の、言葉には、持ち重りするような心象と共に、詩人の心の動きが見える。 心の中まで見通しているのではない。 ただ、その揺れている心持ちを感じ取り、密かな満足感を覚えるのだ。 だが、マーサ・ナカムラの言葉から立ち上る意味は、霧を押し開くような手応えで実態を掴み取らせない。 マーサ・ナカムラの詩は、まるで多重露出のカラー写真を観ているかのよう。 或いは荒木経惟の撮る(描く)一葉のような。 乱暴な構図で、投げ込まれる色、そして抽象。 当然のことながら、言葉の裏側に秘されたように見えるものには仄暗く淫靡な表象が張り付くこととなる。 意図的な多重露出は計算外のニュアンスを産みはするが、案外と凡庸な価値観が透けて見えぬこともない。 その危うさを、極端な擬人化と遠野物語風の語り口で、前のめりになりながらマーサ・ナカムラは転がしてゆく。 言葉の表象を敢えて裏切りながら、ナラティブに詩の言葉を紡ぐこの詩人の行く先は何処なのか。 そればかりが気に掛かる。 でもいったん入り込むと、これはとても不思議。 すごく…おもしろい。 狸やお婆さんが出てきて、まるで昔話のような語り出す。 そして突然サラリと異界へと連れられてしまう…すごく自由に、その詩の中の世界をみせられる感覚が、すごいな、こんなの読んだことない!って思わされる。 反戦的なメッセージが冒頭とラストにあるんだけど、あまりに奇妙だから、重くないし、どんな反戦歌とも違う。 それでいて、異次元の狸たちがホロリと呟く一言がぐわんと考えさせられる一言だったりして… ずっとこのスタイルなのか、この先どんな詩集を作るのか、それとも物語を書いてしまったりして?…と、目が離せない作家さんだ!.

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秒針のように進む文章 荒川洋治さんが選ぶ平成のベスト本5冊 (1)吉行淳之介著『目玉』(新潮社、89年刊)は、昭和後期の名編「葛飾」、平成元年の「いのししの肉」など7作を収録。 女性ではなく、男性を描く筆が冴(さ)えわたる点に見どころがある。 秒針のように進む文章の美しさは、これ以上のものを小説に求める必要がないしるしだと思う。 (2)荒俣宏著『プロレタリア文学はものすごい』(平凡社新書、00年)は、「蟹工船(かにこうせん)」ブームの8年前に書かれた画期的評論だ。 小林多喜二、葉山嘉樹、黒島伝治、岩藤雪夫らを精読。 これまでにない斬新な逆転的視点で、往時のプロレタリア文学の厚みと豊かさを示し、論じ切る。 (3)耕治人(こうはると)著『一条の光・天井から降る哀(かな)しい音』(講談社文芸文庫、91年)は没後に出た代表作集。 畳の上に生まれた小さなゴミ。 長い間、地味な作家生活を送った著者は、後年、現代小説の新たな光源となる作品を書いて読者の心をとらえた。 (4)小山田浩子著『庭』(新潮社、18年)は「庭声」「名犬」「蟹」などを収めた近作集。 世代、時代、個人の間の距離と時間が消えうせる、不思議な世界を映し出す。 文章の傾斜と、速度が印象的。 (5)マーサ・ナカムラ著『狸(たぬき)の匣(はこ)』(思潮社、17年)は、第23回中原中也賞受賞作。 著者は平成2年生まれの女性詩人。 学童疎開、柳田國男への手紙、爆弾三勇士、鯉(こい)を見つめる江戸時代の人など、未体験の情景を溶け合わせ、ことばと詩の自由度を一気に高めていく。 特別な才能だ。 =朝日新聞2019年5月1日掲載.

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