アパレル 興亡。 「百貨店アパレル」の代表だった東京スタイル 商品より営業重視で消滅か

アパレル興亡 / 黒木 亮【著】

アパレル 興亡

「アパレル興亡」(黒木亮、岩波書店、2020) 作家・黒木亮の新刊「アパレル興亡」(岩波書店刊)は、80年以上にわたるファッション業界の栄枯盛衰のドラマである。 主人公のモデルは名門婦人服メーカーとして知られた東京スタイルの中興の祖・高野義雄氏。 約30年間も社長を務めた高野氏は2009年に死去しているが、02年に村上ファンドとの委任状争いで日本中の注目を集めたのを覚えている人もいるだろう。 当時、黒木氏は東京スタイルの株主総会や村上ファンドの取材を通じて高野氏に関心を持ったという。 百貨店を主戦場としたファッション企業の発展と、その凋落と軌を一にする高野氏の歩みを通じて戦後のアパレル産業史を描いた意欲作だ。 経済小説であるため史実と創作が入り交じる。 作中では、東京スタイルは「オリエント・レディ」、高野氏は「田谷毅一」。 だが、村上ファンドの村上世彰氏、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊氏(セブン&アイ・ホールディングス名誉会長)などは実名で出てくるし、レナウン、オンワード樫山、三陽商会、ワールド、三越、伊勢丹、東レ、帝人、ユニクロ、ZOZOなどの企業群も実名で登場して生々しいビジネスのやりとりが繰り広げられる。 田谷は高校卒業後に同郷の知り合いのツテを頼って東京・神田の小さな婦人服メーカー、オリエント・レディに入社する。 田谷は自転車の荷台にたくさんの商品を積み、東京中の小売店に営業をかける。 持ち前の才覚と負けん気が認められ、北千住の洋品店、羊華堂(現イトーヨーカドー)の伊藤雅敏氏ら小売店幹部の寵愛を受ける。 会社も高度経済成長と既製服の普及の波に乗り、日本を代表するアパレル企業へと駆け上がった。 40代でトップに立った田谷はワンマン社長として君臨する。 田谷が黒を白といえば白。 田谷の顔色をうかがう社員ばかりになり、社内は物言えぬ空気に支配される。 私は田谷のモデルになった高野氏を直接取材したことはない。 だが、社員が高野氏を前に直立不動で受け答えする光景を何度か目撃した。 恐怖政治だけで人心掌握はできない。 こわもてだけど、人情家で面倒見がいいという評判もよく聞いた。 ただファッション企業でありながら、上に絶対服従の軍隊のような社風はかなり異質だった。 作中にもそんなエピソードがたくさん出てくる。 たとえば昭和61(1986)年、田谷の経営ミスによって稼ぎ頭である「ラルフローレン」(婦人服)の国内製造・販売権を競合企業に奪われてしまう場面だ。 高級スーツ姿の田谷が、整列した三十人ほどの営業マンたちに呼びかけた。 次の瞬間、田谷の両目から涙がこぼれ落ちたので、営業マンたちは驚いた。 「誠に申し訳ない!ラルフローレンを、オンワード(樫山)に持っていかれた!」 そういってオールバックの頭を深々と下げた。 「えっ!? 」 「うえーっ……!」 営業マンたちから悲鳴や呻(うめ)き声が上がった。 (中略) 田谷は、涙の筋も乾かぬ顔で、きっと歯を食いしばる。 「我々のライバルはオンワードだ。 この借りはきっと返す。 諸君らには一丸となって努力してもらいたい」 「はいっ!」 営業マンたちから一斉に声が上がった。 上司から命じられたときは、たとえわけが分からなくても、元気よく返事するのがオリエント・レディ流だ。 モデルになった東京スタイルは村上ファンドとの委任状争いには勝利したものの、主販路である百貨店の客離れもあってその後の業績は低迷する。 そして高野氏の死後の2011年に同じく大手アパレル企業のサンエー・インターナショナル(作中ではKANSAIクリエーション)と経営統合する。 現在のTSIホールディングスである。 ワールド、オンワードホールディングスに次ぐ規模のアパレルグループとして華々しくスタートを切ったTSIだったが、アパレル市場の構造不況の波に洗われて不採算ブランドの整理を繰り返す。 TSIの事業会社となった東京スタイルのブランドも次々に廃止され、19年3月には展開するブランドは事実上ゼロとなり、東京スタイルは休眠会社になる。 戦後のアパレル産業をリードした名門はあっけなく消えてしまった。 この物語と現実を重ねると、ファッション業界の「諸行無常」を感じずにはいられない。 一時代を築いた名門企業であっても組織が硬直して変化に対応できなければ、新しい企業にその座を明け渡すしかない。 ファッション業界版「平家物語」の趣がある。 1972年、千葉県生まれ。 大学卒業後、出版社勤務を経て、98年に業界紙の日本繊維新聞社に入社。 広告営業を経て編集記者になり、メンズウエア、スポーツウエア、ジーンズカジュアル、SPAなどの分野を取材する。 2009年2月にINFASパブリケーションズに入社。 「WWDジャパン」編集部に配属され、大手アパレル、SPA、商社、百貨店、ショッピングセンターなどのビジネス記事を書く。 ファッション企業の経営者を取材する「CEO特集」をはじめ、「百貨店特集」「ショッピングセンター特集」「商社特集」などを担当。 18年5月に「WWDJAPAN. com」のウェブデスクとなり、19年5月から「WWDジャパン」のデスクとして国内ニュースを統括する。 社会や世相を反映した個人消費の動き、新しい市場を切り開くビジネスパーソンなどに関心を持つ。 ファッションビジネスが激しく変化する中、価値ある情報を届けられるように奮闘中.

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「百貨店アパレル」の代表だった東京スタイル 商品より営業重視で消滅か

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村上ファンドを退けた名門アパレルがたちまち消滅した理由 取り残された「百貨店の男たち」 (2ページ目)

アパレル 興亡

黒木亮著「アパレル興亡」(岩波書店)を先日読み終えた。 そんなに難しい文章ではないので、集中して読めばすぐに読み終えることができるが、2000円もした本なのでちょっとゆっくりと読んでみた。 (笑) 事実に基づいた部分が多いが、ちょくちょくと社名や人名は変えられている。 とはいえ、そこを理解した上で読めば、まったく何の問題もない。 山崎豊子シリーズとはそのあたりがだいぶと異なる。 当方よりも年配の方々が読めば、社名や人名を変えていても「ああ、あれか」とすぐにわかると思うが、当方よりも年下の方々だとわからない部分も多いのではないかと思うので、これから何回かに分けて解説していきたいと思う。 タグは「アパレル興亡解説」にでもしようかな。 そんなわけで新シリーズの第1回である。 何回続くかわからないが。 (笑) この小説の主役は、東京スタイルをモデルとした架空のアパレルメーカー「オリエント・レディ」の社長である田谷毅一(モデルは東京スタイル社長の高野義雄氏)である。 この小説の中盤、バブル経済前夜ごろにポっと出の新興アパレルメーカーとしてKANSAIクリエーションが登場する。 すげーダサい社名なのだが、これが最終的にオリエント・レディ社の命運に大きくかかわってくる。 当然のことながら、このKANSAIクリエーションなるダサい名前の会社は現実には存在しない。 過去も現在も。 となると、どこがモデルなのかということになるが、KANSAIなので山本KANSAI氏がらみの会社かと考える人もおられるのではないかと思うが、最終的にオリエント・レディ社と経営統合を果たすので、この会社はサンエーインターナショナルであることがわかる。 なぜ、KANSAIクリエーションという社名を作家は選んだのかというと、恐らくは、サンエーインターナショナルのもともとの本社が大阪だったからではないかと思う。 年配の業界の方々はとっくにご存知のことなので、読み飛ばしていただいてまったく構わない。 どうしてKANSAIクリエーションがサンエーインターナショナルなのかというと、もう一つ核心的なことがこの小説には描かれてあって、それは「KANSAIクリエーションはもともとは大阪の生地の問屋からスタートした」というような意味の一節がある。 サンエーインターナショナルも元々は大阪の生地の問屋だった。 繊維・アパレル業界には様々な組合団体や連合会、連盟、協会などがある。 その中の一つに大阪織物卸商業組合というのがあって、これは2007年4月に大阪アパレル協同組合、大阪ニット卸商業組合の3つが統合して、関西ファッション連合という団体になった。 その大阪織物卸商業組合の理事長は三宅克彦氏であり、これはサンエーインターナショナルの2代目の社長と同姓同名である。 まあ、三宅はそれほどありふれた苗字ではないが珍しいというほどでもないし、克彦という名前もそれほど珍しくはないから、同姓同名の他人である可能性もあるが、実際のところは同姓同名の他人ではなく、サンエーインターナショナルの2代目社長と同一人物なのである。 実は97年に繊維業界紙記者となったときに、この大阪織物卸商業組合の理事長名を見て、あれ?サンエーインターナショナルの偉い人と名前が同じだなと思って、先輩記者に尋ねてみると 「あー、それ、サンエーの三宅さんやで~」 という返事だった。 小説の中では、サンエーもとい、KANSAIクリエーションはオシャクソ野郎営業マンが上から下まで占めていると描写されていて、それはまあ正しいのだが、その一方でいかにも泥臭くてコテコテなニオイがする大阪織物卸商業組合の理事長を長年務めていたりして、なかなか一筋縄ではいかない性格だったといえる。 最終盤になって登場するがKANSAIクリエーションの経営者は老姉妹である。 当時のサンエーインターナショナルの経営者は三宅克彦氏と三宅正彦氏の老兄弟で、この辺りも男女の違いはあるが、実態を踏襲しているといえる。 田谷社長(高野氏)の死後の2011年、東京スタイルはサンエーインターナショナルと突如として経営統合しTSIホールディングスとなって今に至る。 この当時、すでにこのブログも始めていて「まったく社風の違う2社が統合して大丈夫なのか?」と懸念を持ったし、そのようなことも当時書いたと記憶しているが、この「アパレル興亡」にも 第一に社風が両極端である。 オリエント・レディは社長が絶対の軍隊流統制で、営業マンは地味なスーツワイシャツ・ネクタイ姿、仕事中の私語は一切禁止(中略) それに対してKANSAIクリエーションは「ファッション クソ野郎」の集団で、営業マンは茶髪・金髪も珍しくなく とある。 実際、この通りだったし、報道を受けた感想もこの通りだったから、当方の感想が業界のマジョリティだったとわかった。 ついでにいうと、 東京スタイルオリエント・レディさんの社風は伝聞したところでいうと、凄まじく文中にるように「仕事中の私語は一切禁止」どころか、大阪支社の関係者によると、営業マンがデスクに座っていてもダメで上から「外回りをして来い!」と怒鳴られるし、デスクに座って水を飲むのも禁止だったそうだから、実際のところはこの小説の描写以上の厳しさだったといえる。 で、経営統合の狙いにしても正直なところ、ビジネス的観点で見ればシナジー効果はあまりない。 今ではサンエーインターが東京スタイルの有り余る資産を狙ったからだというのが業界では定説になっているが、この小説でも KANSAIの老 兄弟姉妹経営者が 「あの男が経営統合を匂わせてきたときは、現預金がネギ背負ってきたと思ったんやけどなあ。 下手したら共倒れやで」 と密談している。 あの男とは田谷社長(高野氏)死後に社長に就いた人物のことで、資金繰りが悪かったKANSAIクリエーション経営者が、現預金を積み上げて一説にはピーク時に1400億円くらいあったと言われるオリエント・レディの資産を当てにしていたことが描かれている。 実際にアパレル業界では、その時の統合とそれ以降の展開を見て、 「金持ちの田舎者の親爺(東京スタイル)が、見た目が綺麗だけど金が無くて困っていたアバズレ女(サンエー)に騙されて、全財産を巻き上げられた」と例える人も少なくなかった。 まあ、そんなわけで、この辺りの描写もリアルだし、声がデカいだけのお偉い先生方の意見ではなく、業界のサイレントマジョリティの意見もよく反映されていると感じられる。 そんなわけで今回も「アパレル興亡」をAmazonでどうぞ~ アパレル興亡読みました!分厚い本だから、読むのが大変かなと思ったけど、門外漢の私が読んでも内容が理解出来ました。 ドロドロした社内の事情に、最後は別の企業に会社を乗っ取られて…。 殴ったり、殴られたり、家族を犠牲にしたり、騙し騙され…。 こんなにギラギラした人たち、今もいるのかな、私の周りにはいないなあなんて思いました。 時代設定がうちの祖母が生まれた頃、世界恐慌が始まったあたりからスタートして、最後が5年前で終わります。 ちょっと前に祖母の遺品を整理していたら、オーダーで作った洋服がワンサカ出てきて、何でいちいちオーダーで作るんだろう、面倒くさいだろうに…なんて言ったら、昔はオーダーが普通だったよって母が言ってました。 本を読んでイージーオーダーがどういう仕組みでそうなっていたかという事がよく分かりました。 あと、昔の人が品質にやたらこだわる理由も、昔は粗悪品ばかりだったというのがあるんですね。 私は生まれてこのかた、粗悪品をそんなに見かけた事が無いので、品質を気にした事があんまり無いんですね。 この本とは関係無いのですが、洋服について思うことです。 最近の古着屋さんの服ってほぼ新品なんですよね。 毎年、ものすごい数の服が売られていますが、今ある古着も相当な数がありますよね。 2年前の古着が(汚れていなくて、2年しか経ってないのに古着になるのが変だと思うが。 )定価の8割引きくらいで売られてたりするんですね。 値段が安いし、お金がないから結局古着を買うのですが、新品を買う必要がどこにあるんだろうって思うのです。 今のように、そのシーズンが過ぎた服が全部売り物にならなくなる商習慣は、変えていく必要があるのではないでしょうか。

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